生(なま)のエネルギーと回転人生
(スシロー)
私には休日の楽しみがある。
休日に100円寿司を食べることだ。
1週間の労いを込めて、【生もの】のエネルギーを取り入れることにしている。
しかし、お金がない。
嫁娘が台湾で生活している。その時点で莫大な金がかかる。
しかも学費がかかる学校に行っている。
最近台湾通貨に比べて、円レートが負けている。。
とにかく、お金がない。が、自分にご褒美を上げないと、生命の力が枯渇してしまう。この葛藤の末行き着いた手段、それが
100円寿司で100円の寿司だけを食べる。
である。
150円以上は、目に入らない。
麺類やデザートもエアーですっとばす。
ただ「100」と書かれた皿だけを全力でチェイスするのだ。
コンサート終了直後の駅までのバスくらいファミリーで埋め尽くされている待合室。
スタンディングで構える。
「カウンターのお席が空きましたので、順番前後して申し訳ありません」
(おれか)
直観で思う。
「番号169番ー」
(やはり)
慣れた手つきで番号の紙を手渡し、本日のおすすめの宣告を受ける。
「マグロ食べ比べ2貫500円です!」
はい。
うそ発見器ですら見抜けないほどの反応のなさを見せつけ、席へと導かれた。
問題です。サビとガリとお茶の共通点は・・
食べ放題。
ぃやいやいや。あんた、いち社会人やろぅ。後輩もよーさんおるやないかい!
食べ放題に目を輝かせてどないするっちゅーねん!!
うるさい!
天使のつぶやきならぬ、一般世間の尺度を脳天竹割チョップで半分にし、
スタッキングかと思わせる手際の良さで、お茶碗を2つ机に並べる。
ト。 ト。
音もなく、おしぼりも2つスタンバイする。
寿司屋のお茶は熱湯コマーシャル位熱い。
しょっぱなにお茶を作っておくのだ。
(むろん、猫舌である。)
サビは回転してくるタイプの店である。
ご縁がないといっこうに出会う事ができない。
ガリ。必需品だ。寿司一口に対して、ガリも一口大食べることにしている。
実際、かなり食べる。
ほうばり過ぎて、「かんらっ!!」と思うこともある。
お会計で別途請求される日を恐れているが、今のところない。
さて、頂くとします。。
(代表、炙りサーモンおろしネギ)
[目の前に、握り寿司が現れた!]
こんなモンスターだったら、ニコニコして構えるだろう。
水っけが光沢を放ち、そのしなり具合からぽってりした肉質が訴えかけてくる。
(生ものの持つ ”生(せい)” のエネルギーだぁ)
こういう時には、大きな口を開けて、鼻から空気をたっぷり吸い込み
もっぐもぐ!とダイナミックに食べる!!
うまさが8倍くらいにはなる。ぜひやってみて欲しい。
ネタは柔らかく、弾力があり、甘味があり、みずみずしさが溢れてくる。。
(抜群やないかぃ)
その度に、
(おれ、前世がんばったんやな。)
と思う。
すぐ、
(今世もがんばろ!)と思った。
回転ずっし り
寿司が回転し出したのは、1958年という話もある。結構昔だ。
それから60年余り。
寿司以外の品が回りだしてしばらく経つ。
シャリの上も牛肉や鶏肉や生ハムがどっこらしょと乗っている。
デザートは当たり前。
そのうち、おもちゃやガチャガチャなんか流れてきてもおかしくない。
そして、近い未来。マイナンバーをピッと読み込ますと、
あなた仕様の嬉しいメニューが表示され、欲のままに頼んでいると、最後に生命保険や、証券が回ってくる。。
まぁわいのメニューに150円の品が出てくるくらいになってたらいいなぁとは思うけど。。
ふぅ
よく見るとカウンターには、独自のルールを持ち込んでいる選手達が多数戦いを繰り広げていた。玄人ぞろいの列に交じり、私はたった6皿のお会計を手に、席を後にした。
さすがに店員さんも「あなたですか」と目が語っていた。
(はい。わたしです。)
多分、店員さんから見て、私の目は、下弦の壱の鬼のような目(百)になっていただろう。
はぁ食べたぁ。家帰って無惨様の梅酒でも飲もっ!